30代に差し掛かった頃から、僕は自分の髪に漠然とした不安を抱くようになりました。特に気になっていたのが、両方のこめかみ、側頭部のあたりです。髪をかき上げた時に、地肌が透けて見えるような気がして、鏡を見るたびにため息をついていました。頭頂部や生え際はまだ大丈夫なのに、なぜか側頭部だけが心もとない。AGAではないのかもしれないけれど、このまま進行したらどうしよう、と焦る気持ちばかりが募っていました。育毛シャンプーを試したり、サプリメントを飲んでみたりしましたが、劇的な変化はありません。そんなある日、ふと気づいたのが、自分の「癖」でした。僕は、仕事でパソコンに向かっている時、集中すると無意識のうちに歯を食いしばる癖があったのです。そして、プライベートでは、長時間スマートフォンでゲームをしたり、動画を見たりすることが日課でした。ある時、ひどい肩こりと頭痛に悩まされて整体に行ったところ、施術師の方に「側頭筋がガチガチに凝っていますね。眼精疲労もひどいし、食いしばりも相当強いでしょう」と指摘されたのです。その言葉に、ハッとしました。側頭部の薄毛と、自分の体の不調が、頭の中で一本の線で繋がった瞬間でした。それから僕が始めたのは、高価な育毛剤ではなく、徹底的な「体のコリほぐし」でした。まず、デスクに「食いしばらない!」と書いた付箋を貼り、意識的に顎の力を抜くようにしました。1時間に一度は席を立ち、肩を回したり、首を伸ばしたりするストレッチを導入。そして、夜は湯船にしっかり浸かり、お風呂上がりに、整体師に教わった側頭筋のマッサージを毎日欠かさず行いました。指の腹でこめかみあたりをゆっくりと円を描くようにほぐすと、最初はゴリゴリと音がするようでしたが、続けるうちに少しずつ柔らかくなっていくのが分かりました。この生活を数ヶ月続けた頃、劇的ではないものの、明らかな変化がありました。髪にコシが出て、スタイリングした時に、以前よりふんわりと立ち上がるようになったのです。側頭部の地肌の透け感も、心なしか気にならなくなっていました。僕の側頭部の薄毛は、髪そのものの問題ではなく、生活習慣が引き起こした「体の悲鳴」だったのだと、今では思います。
側頭部の薄毛に悩んだ僕が気づいた意外な原因と対策