「周りの人は、私の薄毛をどう思っているんだろう」「きっと笑われているに違いない」…薄毛が気になり始めると、他人の視線が過剰に気になり、外出がおっくうになったり、人と会うのが怖くなったりすることがあります。私自身も、以前は人混みの中で、誰かの視線が自分の頭部に注がれているような気がして、いつも下を向いて歩いていました。しかし、ある時、心理学でいう「スポットライト効果」という言葉を知りました。これは、人は自分が思っているほど、他人から注目されていない、という心理現象です。自分が気にしていることは、他人にとってはそれほど関心のないことである場合が多いのです。考えてみれば、私自身も、街ですれ違う人の髪の状態をいちいち気にしたりはしません。それなのに、自分のこととなると、世界中の人が私の薄毛に注目しているかのように感じてしまう。これは、自意識過剰が生み出す、ある種の「思い込み」なのかもしれません。この事実に気づいてから、少しずつですが、他人の視線を過剰に気にすることが減っていきました。そして、もう一つ大切だと気づいたのは、自分の意識を「失ったもの」や「足りないもの」に向けるのではなく、「持っているもの」や「自分の長所」に向けることです。薄毛であることは、私の数ある特徴の一つに過ぎません。私には、これまで培ってきた知識や経験、大切にしている趣味、信頼できる友人や家族、そして自分なりのユーモアのセンスだってあります。髪の状態だけで、私の価値が決まるわけではないのです。自分の良いところ、好きなところ、得意なことを改めてリストアップしてみるのも良いかもしれません。最初はなかなか思い浮かばなくても、じっくり考えてみれば、きっとたくさんの魅力が見つかるはずです。薄毛という一点にとらわれず、多角的に自分自身を見つめ直し、自分の持つ価値を再認識すること。それが、他人の視線という名の呪縛から解放され、自信を取り戻すための鍵となるのではないでしょうか。
