佐藤さん(仮名・40代)は、数年前から頭頂部の薄毛が気になり始め、皮膚科を受診しました。診断は男性型脱毛症(AGA)。医師の勧めにより、ミノキシジル5%配合の外用薬(塗り薬)による治療を開始することになりました。医師からは「効果が出るまでには時間がかかります。焦らず、毎日きちんと続けましょう」と説明を受けていました。治療開始から1ヶ月ほど経った頃、佐藤さんはシャンプー時の抜け毛が増えたことに気づきました。「治療を始めたのに、かえって悪化しているのでは?」と不安になり、医師に相談。すると、「それは初期脱毛と呼ばれる現象で、治療が効き始めている証拠の一つですよ。新しい髪が生えるために、古い髪が押し出されている状態です」との説明を受け、少し安心しました。その言葉通り、初期脱毛は2週間ほどで落ち着きました。そして、治療開始から3ヶ月が経過した頃、最初の明確な「前兆」が現れました。シャンプー時の抜け毛の量が、治療開始前と比べても明らかに減っていることを実感したのです。以前は排水溝のネットに溜まる毛の量が気になっていましたが、その量が半分以下になったように感じられました。さらに4ヶ月目に入ると、頭頂部の地肌を鏡でよく見てみると、細くて短いながらも、黒っぽい産毛のようなものが生えてきているのに気づきました。最初は数えるほどでしたが、注意深く見ると、まばらながらも確実に新しい毛が存在していることが確認できました。これは佐藤さんにとって大きな喜びであり、治療継続への強い動機付けとなりました。治療開始から半年が過ぎる頃には、産毛は少しずつ太さと長さを増し、以前よりも地肌の透け感が和らいだように感じられました。また、既存の髪の毛にも変化が現れました。以前は細く、すぐにペタッとなってしまっていた髪に、少しハリとコシが出てきて、スタイリングがしやすくなったと感じるようになったのです。佐藤さんの事例は、薄毛治療における典型的な前兆の現れ方の一つを示しています。初期脱毛を経て、抜け毛が減少し、産毛が生え、髪質が改善していく。もちろん、効果の現れ方や期間には個人差がありますが、こうした前兆を知っておくことは、治療を続ける上で大きな支えとなるでしょう。