まさか自分が薄毛で悩むことになるなんて、数年前までは想像もしていませんでした。三十代後半になった頃からでしょうか、シャンプーの時の抜け毛の量が明らかに増え、ドライヤーで髪を乾かしても、以前のようなふんわり感がなくなってきたのです。最初は気のせいか、疲れているだけだと思っていました。しかし、ある日、合わせ鏡で頭頂部を見て愕然としました。分け目を中心に、地肌がかなり透けて見えていたのです。ショックでした。それからは、人の視線が頭に集まっているような気がして、外出するのも少し億劫になりました。育毛効果を謳うシャンプーやトニックを片っ端から試しましたが、目に見える効果はありませんでした。インターネットで情報を集めるうちに、女性の薄毛治療を専門に行っている皮膚科があることを知りました。正直、皮膚科に行くのは少し抵抗がありました。「こんなことで病院に行くなんて大袈裟かな」とか、「恥ずかしい」という気持ちがあったからです。でも、このまま悩み続けるよりは、一度専門家に見てもらった方が良いかもしれない。そう思い直し、勇気を出して予約を取りました。初めての診察は緊張しましたが、女性の医師がとても親身になって話を聞いてくださり、安心したのを覚えています。マイクロスコープで頭皮の状態を見てもらい、いくつかの質問に答えた後、「女性男性型脱毛症(FAGA)の初期段階でしょう」と診断されました。そして、治療法としてミノキシジルの外用薬と、髪に必要な栄養を補う内服薬を提案されました。医師からは、「効果が出るまでには時間がかかりますが、根気強く続けましょう」と励まされ、治療を始める決意をしました。毎日、朝晩欠かさず薬を塗り、飲み薬も続けました。最初の三ヶ月は、正直なところ大きな変化は感じられませんでした。それでも、医師の言葉を信じて続けました。変化を感じ始めたのは、半年ほど経った頃です。シャンプー時の抜け毛が減り、髪に少しハリが出てきたように感じました。そして、一年が経つ頃には、合わせ鏡で見ても、以前ほど地肌が気にならなくなっていました。完全に元通りとはいきませんが、明らかに改善しているのが分かり、本当に嬉しかったです。皮膚科を受診するまでは一人で悩み、暗い気持ちで過ごしていましたが、勇気を出して一歩踏み出したことで、前向きな気持ちを取り戻すことができました。