高血圧が薄毛に関係する可能性があるとされる背景には、主に「血行不良」が関わっていると考えられています。高血圧とは、血管の壁にかかる圧力が慢性的に高い状態を指します。この状態が長く続くと、血管、特に細い血管である毛細血管に様々な悪影響が及ぶ可能性があります。まず、高い圧力によって血管の壁が常に緊張状態に置かれるため、血管が硬くなり、弾力性が失われていく「動脈硬化」が進行しやすくなります。動脈硬化が進むと、血管の内腔が狭くなったり、血流が悪くなったりします。髪の毛を育む毛母細胞は、頭皮に張り巡らされた毛細血管から酸素や栄養素を受け取って活動しています。頭皮の毛細血管は非常に細く、血流の影響を受けやすい部分です。高血圧やそれに伴う動脈硬化によって頭皮の血行が悪くなると、毛母細胞への酸素や栄養の供給が滞ってしまいます。十分な栄養を受け取れなくなった毛母細胞は、その活動が低下し、健康な髪の毛を作り出すことが難しくなります。その結果、髪の毛が細くなったり、成長期が短くなって抜け毛が増えたり、といった薄毛の症状につながる可能性があるのです。例えるなら、植物に水をやるホースが詰まったり、水圧が弱かったりすると、植物が元気に育たないのと同じような状況が、頭皮で起こっているとイメージできるかもしれません。さらに、高血圧の状態は体内の酸化ストレスを高めるとも言われています。酸化ストレスは細胞の老化を促進し、毛母細胞の働きにも悪影響を与える可能性があります。もちろん、薄毛の原因は様々であり、高血圧だけが直接的な原因となるわけではありません。しかし、高血圧による血行不良が、髪の健康な成長を妨げる一因となり得ることは、十分に考えられるメカニズムなのです。
