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女性の薄毛専門医が解説する原因と対策の基本

こんにちは、皮膚科専門医として日々多くの女性の薄毛の悩みに向き合っています。女性の薄毛は、男性とは異なり、特定の部位が完全に禿げるというよりは、髪の毛全体が細くなったり、分け目を中心に地肌が透けて見えたりする「びまん性脱毛症」や「女性男性型脱毛症(FAGA)」といったパターンが多いのが特徴です。その原因も一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っているケースが少なくありません。最も多い原因の一つが、ホルモンバランスの変化です。特に更年期を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強まることで、髪の成長期が短くなり、細く短い毛が増える傾向があります。また、出産後にも一時的にホルモンバランスが大きく変動し、抜け毛が増える「分娩後脱毛症」が見られます。これは通常、時間とともに回復しますが、回復が遅れたり、他の要因が重なったりすると、慢性的な薄毛につながることもあります。過度なダイエットによる栄養不足も、髪にとっては大敵です。髪の主成分であるタンパク質はもちろん、亜鉛や鉄分、ビタミン類が不足すると、健康な髪を育てることができません。特に女性は月経により鉄分が不足しやすく、隠れ貧血が薄毛の原因となっていることもあります。ストレスも無視できない要因です。精神的なストレスは自律神経のバランスを乱し、頭皮の血行不良を引き起こします。血行が悪くなると、髪の成長に必要な栄養が毛根まで届きにくくなり、抜け毛や薄毛を招きます。睡眠不足も同様に、髪の成長を妨げる要因となります。さらに、間違ったヘアケアが頭皮環境を悪化させているケースも見受けられます。洗浄力の強すぎるシャンプーによる乾燥、すすぎ残し、あるいは逆に洗いすぎによる皮脂の過剰分泌などが、薄毛を助長することがあります。これらの原因が複合的に絡み合っている場合、自己判断でのケアには限界があります。市販の育毛剤やシャンプーを試しても効果が見られない場合は、ぜひ一度、皮膚科にご相談ください。専門的な診断に基づき、原因を特定し、医学的根拠に基づいた適切な治療やアドバイスを行うことが、改善への近道となります。セルフケアで効果が出ないと感じたら、それは専門家の助けが必要なサインかもしれません。