「帽子をずっと被っているとハゲる」という話を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。薄毛に悩む人にとっては、気になる俗説ですが、実際のところはどうなのでしょうか。結論から言うと、帽子を被ること自体が、直接的に薄毛や抜け毛の主な原因になるという医学的な根拠は現時点ではありません。男性型脱毛症（AGA）の主な原因は遺伝や男性ホルモンの影響であり、帽子とは直接関係ありません。円形脱毛症も自己免疫疾患などが原因と考えられています。では、なぜこのような俗説が広まったのでしょうか。それは、帽子の「間違った使い方」が頭皮環境に悪影響を与える可能性があるからです。その悪影響が、間接的に薄毛の進行に関係していると誤解されているのかもしれません。具体的にどのような使い方が問題なのでしょうか。一つは「蒸れ」です。長時間帽子を被り続けると、頭皮から出る汗や皮脂によって帽子内部が高温多湿の状態になります。このような環境は雑菌が繁殖しやすく、毛穴の詰まりや炎症、かゆみ、フケなどを引き起こす原因となります。頭皮環境の悪化は、健康な髪の成長を妨げる要因となり得ます。二つ目は「摩擦」です。サイズの合わない帽子や、硬い素材の帽子を長時間着用すると、帽子と頭皮の間で摩擦が生じ、髪の毛や毛根に物理的なダメージを与える可能性があります。特に、すでに弱っている髪の毛は切れやすくなったり、抜けやすくなったりすることが考えられます。三つ目は「圧迫」による血行不良です。きつすぎる帽子は頭皮を締め付け、血流を悪くする可能性があります。髪の毛の成長には、血液によって運ばれる栄養素が不可欠なため、血行不良は髪の成長を妨げる一因となり得ます。つまり、帽子そのものが悪なのではなく、通気性の悪い素材を選んだり、長時間蒸れたままにしたり、きついサイズを我慢して被ったりするような「不適切な使用」が問題なのです。適切な素材を選び、こまめに汗を拭いたり、帽子を清潔に保ったり、適度なサイズを選んだりすれば、帽子が薄毛を悪化させる心配はほとんどないと言えるでしょう。むしろ、紫外線対策としては有効なアイテムです。俗説に惑わされず、正しく帽子と付き合っていくことが大切です。
